内臓と精神の関係

はじめに

人間の内臓は、五臓六腑でできています。

【五臓とは】
肝臓、心臓、脾臓、肺、腎臓

【六腑とは】
胆のう、小腸、胃、大腸、膀胱、心包

この五臓六腑はお互いに助け合い、また牽制し合いながら
身体の調和を保っています

また内臓は、感情的な面、精神的な面などとも助け合い、牽制し合いながら
生活に支障がないように、リズムを持って活動を続けているのです。

内臓と精神(こころ)の関係を、個別にご紹介していきます。


胃と精神の関係

胃は、食べ物を受け入れ、消化させる役割を持っています。

胃の調子が悪いときは誰でも分かります。
・胃が重い
・胃が痛い
・口の中が酸っぱい
・胃がムカムカして気持ち悪い
・食欲がない
などです。

胃は、人間の身体の真ん中に存在していて、人の命をつなぎ、
精神的に好ましくないことがあると、すぐ反応する腑(臓器)でもあります。

【胃の調子が悪いと……】
胃は人間の命をつなぐ腑(臓器)ですので、
胃の調子が好ましくないと、努力することが難しくなります。
頭では分かっているのに、身体がついてこない傾向があるのです。

例えば……
・とにかく眠たい
・(特に冬などは)布団からあまり出たくない
などです。

努力することが難しくなるので、
誰かに依存しようとする気持ちが強くなり
少しでも依存できる人がいれば、どっぷり依存してしまいます。

自分でできる範囲のことでも依存しようとするので、
周りの人が嫌がるのですが、
自分でも知らず知らずのうちに
そうなってしまう傾向があるのです。

いつも
・胃が重い
・胃が痛い
・胃がキリキリする
・胃が気持ちが悪い
・胃が働かない
という状態なので、本人も改善しようとはするのですが、
なかなか心のスイッチが入りません。

食べ物を食べたり、食べなかったり、
夜遅くに食べたり、暴飲暴食したり、
お菓子ばかり食べたり、偏食したり……。
このような食生活が続いてしまうので、
食事のリズムを正すことが難しいのです。

生命を維持する「胃」。
胃の調子がよくないと、
生きることに対して少々努力はするのですが、
長時間頑張れない傾向があります。

その結果、仕事をやり遂げることが難しくなってしまいます。

また、時々、倦怠感に襲われたり、気が滅入ったりするので、
頑張りが続かなくなります。

そうすると、
楽しみである食べ物に気持ちが向くので、
空腹でもないのに食べてしまいます。

ますます胃の負担が大きくなってしまう
という悪循環に陥ってしまうのです。


脾臓と精神の関係

「脾臓が悪い」と言うと、「何?」「脾臓って?」と聞く人が多いです。

「慢性」という名前のつく病気の大部分が、すい臓や脾臓と関係します。
例えば……
心臓病、肝臓病、腎臓病、胃の病気などです。

すい臓や脾臓が病気になるということは、
そのくらい難しい病気との関わりがあるのです。

【脾臓のはたらき】
脾臓は胃の裏側にある臓器です。

脾臓のはたらきは、
・古くなった血液を処理する
・新しい血液をつくる
・血液を体内の必要なところに送り出す
などです。

胃が生命を維持する腑(臓器)だとしたら、
脾臓は人間にエネルギーを与える臓器だと言えます。

【脾臓の調子が悪くなると……】
もし脾臓が不調になり、その機能が落ちたら、
エネルギーを与える役割をしているので、無気力になりがちです。
家でだらだらし、会社に行くにもひと苦労。
少し仕事をすると、座ったり、横になりたくなったりします。

やりたいことも分からないまま、言われるままに仕事をし、
人生の希望も持てず、何をするにも億劫(おっくう)になってしまうのです。

外からの刺激が少し強くなると憂うつになり、
これが長期化すると、うつになりやすくなります。

身体にエネルギーを送ってくれる脾臓が不調になると、
無気力になり、夢を持つことが難しくなるので
人生に対する意欲も薄くなってしまいます。

そのため、ますます気持ちが暗くなって、
精神的にも弱くなり、なかなか気力をつけられないのです。


肺と精神の関係

肺は悲しみを司る臓器で、大腸と表裏の関係にあります。

【肺のはたらき】
・肝臓がリズムを保つように働きかける
・血液や気が、全身をめぐるようにする
・血液を浄化してくれる

このように、肺は気の流れを滞りなく回す役割を持っているので、
私たちが健康を保つために重要な臓器であることがよく分かると思います。

【肺の不調が心に与える影響】
肺は身体に気を取り入れ、
人が生命を守るための基本となる活動をしてくれる臓器なので、
意外に精神面と関わりがあるのです。

例えば……
何かに集中するときには、呼吸が半分になったり、
考え込んでいるときには、呼吸が浅くなったりします。

さらに……
自信がないときや、自分を否定しがちなときには
心が暗くなって悲しんだり、
物事をネガティブにとらえたりします。
そういうときは、呼吸に好ましくない影響を与えるのです。

そうなると、精神的にも気力が弱くなるので、
自分の殻にひきこもる入り口をつくってしまいます。

肺があまり丈夫ではない方や、
わりとネガティブになりやすい方は、
一日に何回か深呼吸の習慣をつけるとよいです。

肺が弱いときには、深い呼吸ができなくなるため、
すぐ悲しんだり、自分を責めたり、
他人を責めたり、嫉妬したり、
他人と会いたくなくなったりする傾向が強くなります。

日頃、呼吸を整えることや、
乾布摩擦などで肌の毛穴を強くこすって
肺を丈夫にするように心がけ、
ネガティブにならないように気を付けるとよいですね。


心臓と精神の関係

心臓は喜びを司る器官です。
心臓が悪いと、長く生きられない場合が多いです。

【心臓が不調になる要因】
・腎臓の新陳代謝の能力が落ちた時
・肺の気血を回す能力が落ちた時
・肝臓の解毒機能が低下した時
・脾臓の温める能力が落ちた時
・新しい血液をつくり出し、古くなった血液を処理するという
脾臓の能力が衰える

これらの影響で、心臓の活動が鈍くなってしまうのです。

つまり、心臓そのものが悪いのではなく、心臓は被害者の立場なのです。

【心臓が不調になると……】
被害を受けた心臓がバランスを崩すと、
うれしさを感じる能力が鈍くなります。

顔色が真っ赤になりやすく、
少し早歩きをすると息が切れるので、
外に出ることが億劫(おっくう)になります。
家の中でもなるべく動かず、じっとしていることが多くなります。

当然、人と接することが少なくなります。
そのほうがラクなのです。

家族との会話も、ひと苦労です。
家の中でもじっとしていて、楽しみはテレビとネットになるのです。

自分で自分を楽しくするという機能が衰えるきっかけになり、
はじめはテレビやネットが楽しみとなるのですが、
いつのまにかそれを見るのもつらくなります。

他人が「よい」という噂に流されて、テレビやネットをいじるようになります。

それもいよいよ楽しくなくなり、ボーッとしている時間が多くなります。

外に出ても、すぐ家に戻りたくなったら、
考えている以上に心機能が落ちていることでしょう。

また、精神面で周囲から左右されやすく、
特に重要依存人物に左右されやすいので、
喜びはなかなか長く続かないのです。

つらいのは、不眠が続いたと思えば、ずっと眠り続けてしまう。
これをくり返すので、
・基本的な生活リズムを崩しやすい
・精神的に弱気になりやすい

その結果、環境に疲れやすくなるのです。


肝臓と精神の関係

肝臓は体の右側にあり、内臓の中でいちばん大きく、血管も多い臓器です。
肝臓がもっとも大きい臓器で、血管も多いのには、理由があります。

【肝臓のはたらき】
・胆汁を分泌して、胃腸に送る
 ※胆汁には殺菌作用がある

・糖をエネルギーに変化させ、全身に送る

・精神的過労時にできる副腎ホルモン「アドレナリン」を調節する

これらのことから、肝臓は「しのぶ臓器(沈黙の臓器)」と言われているのです。

【肝臓の不調が感情に及ぼす影響】
何らかの理由によって肝臓の働きが低下すると、
解毒作用がスムーズに行われなくなり、自家中毒を起こします。

↓ その結果……

感情にムラが生じ、すぐ怒ったり、落ち込んだり、
焦ったり、自意識過剰になったりするのです。

いつもだったら計画通り行動できる人でも、
解毒処理ができなくなると、気持ちが焦ってしまって
早く終わらせたいと思うようになります。

普段は人情に厚く、面倒見のよい人でも、
肝臓にストレスがかかると、
他人を疑ったり、自分が損をすることは遠慮するようになります。
感情に左右されてしまうので、周りから
「よく分からない人だ」と言われることもあります。

適度な休息をとり、「休肝」を行うと、
肝臓は自分の役割を忠実にこなすようになります。


腎臓と精神の関係

腎臓は腰のあたりに位置する臓器で、
血液が多く、恐れを司る内臓です。
血液の塊の中から新陳代謝を行い、尿などをつくります。
つまり、肝臓と同じように化学的な反応を行う、大切な臓器なのです。

【腎臓のはたらき】
腎臓は、
・肝臓でつくられた老廃物を変化させて大腸に送り、便として排出する
・余った水分を膀胱に送り、尿として排出する
という働きをし、さらに腎臓は、体の体温を調整し、血液濃度も調整します。
その上、さらに大切なのは、先天の元であり、精を貯蔵します。

肝臓が解毒した老廃物は、腎臓の新陳代謝によって
やっと体の外に出されるので、腎臓がいかに大切な働きをしているか、
お分かりになると思います。

さらに、いつも全身にきれいな血液がめぐるように、
腎臓が濃度を一定に保つ役割をしています。

このため、慢性的な病気には腎臓が関係していることが多いのです。

【腎臓の不調が感情に及ぼす影響】
腎臓のリズムが崩れると、恐れを感じやすくなり
少しのことでも気になってしまいます。

また、愚痴っぽくなったかと思えば、虚勢を張ったりすることもあります。

腎臓は人間の精を司る臓器ですので、
腎臓が弱くなっているときには、底力が弱くなるのです。
普段は勇気があって、底力のある人でも、
腎臓に何かが起こると、利己主義に走ったりします。
判断力を失いがちになるので、自己不信につながり、
しばしば無謀に終わることも。。。

腎臓は知恵と勇気を司る臓器でもあるので、
腎臓の健康を損なうことは、
知恵と勇気が不足することなのかもしれません。

腎臓は、「恐れ」という感情と深い関わりがあります。
「恐れ」は自己不信から生じることが多いので、 
「恐れ」が大きくなりすぎると、人間から知恵と勇気を奪ってしまい、
さらなる「恐れ」を生み出します。

普段から自分を信じることを習慣付け、
精神的な豊かさが腎臓の新陳代謝を助けることを
理解しておいていただくとよいと思います。